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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)249号 判決

一 請求の原因一、二の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決取消事由について検討する。

1 本願意匠と引用意匠の各構成が審決認定のとおりであることは原告の認めるところであり、両意匠を対比すると、審決認定のとおり請求の原因三(1)(一)に示される差異があることは当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第二号証の二、第三号証によれば、両意匠には、請求の原因三1(二)で原告の主張する差異があることが認められる。

一方、右各甲号証によると、本願意匠と引用意匠はともに、意匠に係る物品において一致し、意匠の基本的性質を決定すると認められる主要な構成においても次に述べるとおり一致しているものと認められる。

すなわち、まず、その本体は、覆枠の基本的形状を円形盤体状にし、その係合面側には面内中央に小円形状の係合孔を形成し、係合孔から覆枠周側面周縁までの係合面を一体に形成した平板面状とし、その周側面は係合面に対して直立状にしている。本体の取付け面側は、取付け基板の形状を覆枠の内側周縁と同一の円形板状とし、その上に基板と同形の座板を置いて取付け枠とし、脚体につき、先端のみを半円形状にした細幅帯状のその長さが本体と掛具を係合させた幅の約一・五倍ある取付け脚片一対を並行に対向状に座板と連続状に直角に突起するように形成し、取付け枠を覆枠の周縁端に等間隔に設けた複数個の止め爪によつて固定したものとしている。次に、掛具は、保持板の基本形状を覆枠と同一又は略同一の直径の円形平板状にし、その係合面側には面内中央に直径を覆枠の係合孔よりも一回り小さい短円柱状の係合突起を突設し、取付け面側には、脚体につき、本体の脚片と同形同長の取付け脚片一対を平行に対向状に座板と直角に突起するように形成し、円形の座板を保持板の中央に鋲止めにしたものとしている。

2 そこで、右の主要な基本的構成を前提に、両意匠の前記相違点について検討する。

まず、本体の係合孔の直径の差異(相違点(1))は、これを見る者をして引用意匠の方が本願意匠におけるよりもやや大きめの係合孔が存する程度の印象を与えるにすぎず、また、その係合孔内の突起の有無(相違点(6))は係合孔内に着目してはじめて目に付く差異であつて意匠的にはほとんど意味のない差異であり、覆枠における係合面と周側面との間の形状の差異(相違点(2))も覆枠全体の円形盤体状が与える印象に比すれば微差にすぎないものと認められる。覆枠における周縁端の止め爪の数及びその形状の差異(相違点(3))は、両意匠において見る者に若干の印象の違いを与えるが、止め爪は本来物と物とを止める機能を持つ部品であつて意匠としての美感を生じさせる役割を通常は荷うものではなく、また、止め爪の各種の形状やその用いられる個数に差異があることが係合具あるいはスナツプ等の意匠の属する分野において周知のことがらであることは原告も認めるところであり、これらの事実からすると右の差異は本願意匠を引用意匠と区別するに足りる重要な差異ということはできない。本体と掛具における脚片の間隔の各差異(相違点(4)、(11))は、本願意匠において座板の直径のほぼ二分の一、引用意匠においてほぼ一・六分の一であつて、この程度の差異は一見したところ同一の間隔と見られる程度のものであり指摘されて気付く微差にすぎない。本体取付け面側の脚体の形状の差異(相違点(5))は、脚片の側方の割欠の有無、鋲止め状の有無という差異はあるものの、別紙(一)の本体の底面図、別紙(二)の本体の背面図によつて見られるとおり、ともに覆枠の周縁の円形の輪郭内において脚片間隔を直径とするほぼ円形の線として現れ、これらが二重円形を呈する点において同一であるから、右の差異をもつて両意匠を区別する特徴ということはできない。掛具の保持板周縁の形状の差異(相違点(10))は、特にその部分に注意を向けることによつてはじめて気付く程度の微差にすぎないと認められる。

これに対し、掛具の係合突起の形状の各差異(相違点(7)、(8)、(9))は掛具から突出した部分の差異であり、見る人の注意を一応引くに足る相違ということができる。しかしながら、右の差異があるとはいえ、両意匠の係合突起はいずれも短円柱状のものであつてその形態は突起として周知の形態であることは原告の認めるところである。そして、この差異を前記本願意匠と引用意匠がともに有する意匠の基本的性質を決定する主要な構成のうちにおいて見ると、右の差異は、あくまでも主要な基本的構成を同じくする止具において、僅かにその掛具の係合突起を部分的に他の既存の形態に改変した結果生じた差異と認識させるものにすぎないと認められ、これをもつて両意匠から生ずる美感が相当程度きわ立つて異なり両意匠を意匠として別異のものと認識させるに足りる特徴とまでいうことはできない。

そして、両意匠の差異が右に認定したとおりのものにすぎない以上、これらの差異をすべて考慮に入れて両意匠を観察しても、両意匠は、その一致する主要な基本的構成から生ずる美感を同じくするものと認められ、これを別異のものとするとは到底認めることができない。そうとすると、原告が請求の原因三3において主張するところのこの種止め具の取引面における意匠的識別の実情を考慮に入れても、両意匠は、結局、類似の範囲を出ないものといわなければならない。

3 以上のとおりであるから、本願意匠が全体として引用意匠に類似するものとした審決の判断は正当であり、審決にこれを取り消すべき違法の点は見当たらない。

三 よつて、原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註その一〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

〔編註その二〕 本件における意匠は左のとおりである。

別紙(一) ―本願意匠―

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